有安杏果、デュオ編成で回った約1年ぶりのツアー「サクライブ2022」。東京公演の2日目をライブレポ

ライブレポート | 2022.04.27 15:00

有安杏果 サクライブ ~Acoustic Tour 2022~
2022年4月3日(日) 大手町三井ホール

弾き語りからデュオへ。昨年の4月から9月にかけて全9公演が開催された「サクライブ 弾き語りツアー 2021」では有安自身のギターとピアノによる弾き語りとなっていたが、約1年ぶりとなる「有安杏果 サクライブ ~Acoustic Tour 2022~」は、バンドメンバーである宮崎裕介(Pf)を迎えたデュオ編成で全国5都市6公演を回った。
(リンクが入ります:ツアー終了後のインタビューはこちら「有安杏果、「サクライブ2022」を終えたばかりの心境、新曲に込めた思い、東京公演の2日目に見せた涙の理由を語る」

ライブは真っ赤なライトに照らされて荒々しくギターをかき鳴らし、大声で<僕はここにいる>と叫ぶ「遠吠え」からタオル回し曲としてお馴染みの「Drive Drive」というアップテンポなナンバーの2連発によって口火を切った。アコースティックライブではあるが、宮崎によるピアノのタッチも力強く、冒頭から自然とクラップが湧き起こり、場内の熱気は一気に上昇した。そして、「まだ楽器が弾けない時に鼻歌で作りました。毎日、生きていくのに精一杯で、このままでは大事なものを見失なってしまうかもしれない。でも、大事なものを見失わないようにせんとあかんなと思いながら描いた曲」だという「ハムスター」では切実なフェイクを鳴り響かせ、昨年の弾き語りツアーのために作った「指先の夢」では、歌い続けていく意思の強さを込めながらダイナミックな広がりをみせ、スイングする「愛されたくて」ではご機嫌なピアノソロに続き、見事なスキャットを披露して喝采を浴びた。

中盤には各地で日替わりのカバーコーナーが設けられた。コブクロ「ここにしか咲かない花」(大阪)、宇多田ヒカル「花束を君に」(名古屋)、ORANGE RANGE「花」(福岡)、back number「高嶺の花子さん」(東京Day1)と、“花”をテーマにした選曲となっており、セミファイナルの東京Day2とファイナルの仙台では、BUMP OF CHICKEN「花の名」をピアノ伴奏のみでカバー。ライブに足を運んでくれた観客への感謝の思いを込めて歌い上げた彼女は、映画『バグダッド・カフェ』のテーマソング「Calling you」のカバーでは一転。これまでに聴いたことのないような低く深い歌声で一瞬にして目の前の風景を変え、土が舞う風の匂いがする砂漠の中へと観客を引き連れていったと思ったら、「Calling you」のイントロのフレーズに自身のオリジナル曲「虹む涙」の歌詞をミックスしてスムーズに移行。一人きりで砂漠を歩いていたと思ったら、いつの間にか現実へと戻ってきたような不思議な時間となっていた。

そして、有安がガットギターを弾き、ボサノバにアレンジされた「TRAVEL FANTASISTA」。フロアが明るくなり、大きなクラップが沸き起こった「Runaway」。そして、ブルースにアレンジされたイントロから、“あなた”ではなく、“みんな”と感じたいと歌詞を変えて歌った「feel a heartbeat」への展開が、この日のライブのクライマックスだっただろう。お馴染みのクラップだけでなく、こぶしも上がるほどの大きな盛り上がりとなり、演奏後の拍手もなかなか鳴り止まなかった。ここで有安「変なタイミングで泣きそうになった。みんなのパワーがすごすぎて」と語ったあと、「初めての横浜アリーナを思い出しちゃった」と言いながらしゃがみこんで涙を流しそうになったが、顔をあげて「今、伝えたいのは、みんなと一緒にライブができて嬉しいです」とファンに向けての感謝の言葉を伝えた。

ハンドマイクでヴォーカリストとしての多彩な表現力を発揮させた「ペダル」「ヒカリの声」を経て、「大好きな歌をみんなの前で歌えて楽しいなと噛み締めています」と笑顔で語り、音楽への情熱に急かされるようなメロディと歌詞が印象的な新曲「夢の途中」を披露。コロナ禍になる前に作った曲であることを明かし、「楽なことばかりじゃなくて、大変なこともたくさんある中で、もう1回、自分の決めた道を信じて、歌を頑張っていこうって思って活動を始めて。本当に夢の途中やなと思いながら作って。私は絶対に歌を歌い続けるという強い思いを込めました」と改めて決意を表明。アコギを手にした「Another story」では、有安の全開のエネルギーに感化されたかのように観客が一体となって手拍子を鳴らし、本編の最後は、「みんなにいいことが起こりますように」という願いを込めた「サクラトーン」で、まるで目の前に桜の花びらが舞い散るかのようなドラマチックな大団円を迎えた。

アンコールでは「LAST SCENE」をジャジーにしっとりと歌ったあと、音楽の弾力性に溢れた「Catch up」で足を踏み鳴らし、ジャンプしながら歌って盛り上げると、「すごい。楽しい。幸せです」と満面の笑顔を見せた。

「このツアーでまた1つ階段を上れた気がします。宮崎さんが私を成長させてくれました。そして、今年は久しぶりにマイク一本で歌う曲もあって。宮崎さんと来てくれたみんなが私を歌手にしてくれたなと思いました。本当にありがとうございました。これからもいろんなことにチャレンジしていきたいし、またバンドのライブもやりたいし、また踊りたいし、いろんな有安杏果を楽しみにしてくれたら嬉しいです」

温かく大きな拍手が会場を包み込む中で、「今回のツアーに向けて作った一番新しい曲です。ラブソングなんだけど、普段の日常の温かさを歌にできたらいいなと思って書きました」と語りかけ、新曲のラブバラード「オレンジ」で穏やかな幸せに満ちた歌とパフォーマンスを届け、デュオによるアコースティックライブは温かい空気の中で締めくくられた。すでに何度も語られていることはあるが、当たり前が当たり前でなくなった今、本ツアーを通じて、有安を含むツアースタッフ、観客、みんなが改めて当たり前の日常生活やライブに対して、幸せを実感したのではないかと思う。

INFO

「有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」オフィシャルグッズがWEBにて販売中!

「有安杏果 サクライブ Acoustic Tour 2022」の会場にて販売していたオフィシャルグッズが、有安杏果OFFICIAL SHOPにて販売中。
8,000円以上ご購入頂いた方にお渡しする特典のショッパーも数量限定で復活。

■販売開始:2022年4月22日(金)18:00~
※各商品、数には限りがございますので、予めご了承いただきますようお願い致します。

詳細はオフィシャルサイトにて

  • 永堀アツオ

    取材・文

    永堀アツオ

  • 撮影

    ハービー・山口

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